なぜクマは人を襲うのか。
- 有限会社 美工舎塗装工業 広報担当
- 10月23日
- 読了時間: 6分
更新日:3 日前
タイトルの答えは「ビックリしてひっかいちゃった!」になります。
「驚き→恐怖→攻撃または退避」という生理反射の結果で、「攻撃」をクマが選択した場合に襲われる…ということになります。

人間なら突然脅かされたときに「うわっ」と声が出たり、反射的に手や足が出るものですが、クマの場合は驚かされると「反射的に逃げるか攻撃するか」を選択する。
つまり、ツキノワグマが人を襲うのは、「相手を排除しよう」とか、「襲って食べよう」という明確な思考ではなく、ビックリしてパニックになった上での突発的行動なのです。
出典:Wikipedia ツキノワグマ
秋田県では、2025年10月21日までに、クマに襲われて1人が死亡、43人がけがをしています(10月21日時点)。これは、人身被害が過去最多だった2023年度をはるかに上回るペースです。
なぜこんなにも人が住む街中まで出没するようになったのか。それはやはりクマのエサとなるブナの大凶作が原因の一つとされています。
ツキノワグマは、冬眠前の秋に栄養価の高いドングリやブナの実といった「堅果類」を大量に食べて脂肪を蓄えます。この食料が山になければ、クマは生きていくために餌を求めて人里へ降りてくるしかありません。

1. 鍵は「ブナの結実サイクル(マスティング)」
ブナの木には、数年おきに広範囲で一斉に大量の実をつける「豊作」と、実がほとんどつかない「凶作」を繰り返す、「マスティング」という特有の結実サイクルがあります。
- 豊作の年:山に食料が溢れるため、クマは人里に降りてくる必要がなく、出没件数は減少します。 
- 凶作の年:山に食料がなくなり、クマが餌を求めて人里へ大量に出没し、人身被害が増加します。 
2. 「資源の枯渇」による大凶作
ブナの木は、大量の実を実らせるために、体内の多大な栄養資源(炭水化物や窒素など)を消費します。このため、一度大量に実をつけた豊作の翌年は、次の実をつけるためのエネルギーが不足し、自動的に凶作になりやすいのです。
東北地方のブナの結実は広範囲で同調する傾向が強いため、ある地域で凶作になると、東北全体でクマの餌が不足する事態となります。
3. 「開花状況の悪さ」が裏付けた予測
東北森林管理局の調査では、既に2025年度のブナの開花状況が悪かったことが確認されています。ブナの開花量が少なければ、その秋に実る果実も少ないため、この調査結果が「大凶作」という予測を裏付けています。
4.ブナ枯れの影響
筆者が住んでいる由利本荘地域の広葉樹の多い山々を見ると、ところところで枯れた木が見受けられます。この枯れた木の多くが実はブナの木なのです。鳥海山に近いところに住む知人の話では「ブナの巨木が何本も立ち枯れしている」と言います。
「これは恐らくブナ食い虫のせいだろう。松を枯らす松食い虫と同じような線虫の仕業だよ。別な虫だとも言われてるが、俺は松食い虫と同じ虫だと思う…」続けて「ブナがみんな枯れて食うものが山に無いんだ。そりゃ人里に降りてきて栗とか果物とか食うしか無いよな…」と。※個人の意見によるものです。
出典:Wikipedia ブナ科樹木萎凋病
クマにとっても、今が生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているのですね…。

クマの身体能力と攻撃力
クマ(特に日本に生息するツキノワグマやヒグマ)は、単なる野生動物ではなく、国内の野生動物の中でも最強クラスの身体能力と攻撃力を持っています。
・走る速度時速:40km~50km(ツキノワグマ)に達すると言われています。人間が逃げ切るのは不可能です。
・運動能力:木登り、水泳も得意。垂直な壁でも爪が立てば登ることが可能です。
破壊的な武器:爪と前足
・ネコのように引っ込めることができない、鋭い爪を持ちます。攻撃を受けると、顔面や頭部を深く引き裂かれ、重篤な傷や致命傷に至る可能性が高いです。また傷の感染症も非常に危険ですね。各市の病院で応急処置はできますが、感染症に対応できるのは秋田市の限られた病院しかありません。つまり、クマにより怪我を負った場合、秋田市の病院へ入院となります。
・前腕や肩の筋肉が非常に発達しており、引っかく力、引き剥がす力が強力です。人間の防御や服を容易に引き裂きます。
強力な噛む力と頭部の防御力
・噛みつかれた場合、骨を砕かれたり、重要臓器に致命的なダメージを負ったりします。
・頭蓋骨はぶ厚く丈夫で、脳の位置も奥まっており、頭部への攻撃はほとんど効果がないと分析されています。棒や斧などで頭部を叩いても、クマの動きを止めることは困難です。
鼻は急所ですが、時速40km以上で突進してくるクマの縦横数センチの鼻先を叩くのは、大リーガーである大谷翔平選手でも無理でしょう。
警官が装備している拳銃なら効果がありそうに思えますが、拳銃にはクマを即座に無力化できるほどの威力がなく、発砲してもかえってクマを刺激し、攻撃を激化させる危険があるため、駆除目的では使用されません。
そもそも警察官はクマを拳銃で撃つことはできず(個人の身を守る際は除く)、クマの急所などの知識がありません。クマを確実に駆除するためには、散弾銃のスラッグ弾やライフル弾といった、より強力な猟銃(長物)の威力が必須とされます。
・拳銃弾:9mmパラベラム弾・約450 J ~ 500 J(J:運動エネルギー・ジュール)
・散弾銃スラッグ弾:12ゲージ スラッグ弾・約2,500 J ~ 3,500 J(短距離)
・ライフル弾:.308ウィンチェスター弾・約3,500 J ~ 4,500 J(長距離も可)
察官が持つ9mm拳銃弾のエネルギーは、約450 J~500 J程度であり、これはライフル弾や散弾銃スラッグ弾の約1/7~1/10程度の威力に過ぎません。この程度の威力では、クマの分厚い皮下脂肪、筋肉、そして硬い頭蓋骨を貫通して致命傷を与えるのは極めて困難です。
クマは、人間の筋力やスピードをはるかに凌駕し、防御力の高い頭部と、鋭い爪・牙という強力な武器を持っています。
クマと遭遇した場合の最優先事項は、「逃走や応戦ではなく、防御と回避に徹すること」です。
- 防御の最終手段:襲われた場合は、「防御姿勢」(うつ伏せになり、両手を首の後ろで組んで頭部と首の急所を守る)をとり、致命傷を避けることが推奨されます。 
- 最良の対処法:クマを刺激しないよう静かに立ち去るか、クマ撃退スプレーを使ってクマをひるませ、その隙に安全な場所へ避難することです。 

本日の記事は、我々が普段取り組んでいる塗装業とは全く関係のない、クマの生態と地域安全に関する話題となりました。
専門外の領域に筆を執るのは気が引けましたが、地域の皆様の安全と命を守るためには、正確な情報共有が何よりも重要だと感じています。
知ることが、危険を回避し、命を守る最初の一歩につながります。
ぜひこの情報を周囲の方々と共有し、今年の冬眠入りまでの期間、最大限の警戒を続けていきましょう。
地域に根差す業者として、皆様の安心安全な生活を心より願っております。

