暑い。きつい。それでも、塗装は面白い。
- 20 時間前
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真夏の屋根の上は、地上とは少し世界が違います。頭の上からは強い日差し、足元からは熱を持った屋根の照り返し。金属屋根ともなれば、「ここで目玉焼きでも焼けるんじゃないか」と冗談を言いたくなるほど熱を持つこともあります。
塗装職人が履く靴も、作業性や足元の感覚を重視した比較的薄いものがあります。そのぶん、屋根の熱が足の裏まで伝わってくることもある。空調服を着ていても、外気そのものが熱ければ入ってくるのは生ぬるい風です。ファンは回っている。それでも暑い。
昔は空調服すらありませんでした。タオルを首に巻き、水を飲み、日陰を見つけて休む。今より「暑くても仕事をするものだ」という感覚が強かった時代もあったでしょう。

毎日のように外で働いていると、身体は少しずつ暑さに慣れていきます。いわゆる暑熱順化です。夏の初めにはきつかった暑さでも、しばらくすると身体が対応しやすくなることがあります。
だからといって、暑さに強くなったから大丈夫という話ではありません。むしろ怖いのは「いつも外で働いているから平気」と思ってしまうことです。
喉が渇いてからではなく、その前から水分を取る。めまい、立ちくらみ、ふらつき、頭がぼんやりするといった異変が出たら作業を止める。屋根や足場の上では、ほんの一瞬のふらつきが大きな事故につながります。
事故が起きれば職人本人だけの問題ではありません。工事は止まり、お客様にも心配や負担をかけることになります。「あと少しだけ」と無理をするより、一度降りて身体を冷やす。休むことも、現場をきちんと終えるための仕事です。

ここで少し不思議なことがあります。塗装は決して楽な仕事ではありません。夏は暑い。冬は寒い。身体も使う。それでも長く続けている職人がいます。
もちろん理由は人それぞれです。ただ、実際の塗装職人の話を調べていくと、「塗ること自体が面白い」「試行錯誤して上手くなっていくのが楽しい」という声があります。
塗装には、一つの正解があるわけではありません。同じように見える壁でも下地は違い、材料も違い、気温や湿度も違う。刷毛やローラーの使い方、塗料の含ませ方、力加減、塗る順番でも仕上がりは変わります。
昨日うまくいった方法が、今日もそのまま正解とは限らない。「もっときれいにできる」「もっと速くできる」「この材料なら、こっちのやり方の方がいい」。経験を積むほど、今まで見えなかった難しさまで見えるようになります。

ゴルフや筋力トレーニングに似ているところがあります。最初はできなかったことが、少しずつできるようになる。できるようになると、今度は前まで気づかなかった粗が見えてくる。だからまた工夫する。
職人仕事も、結局は昨日の自分との勝負なのかもしれません。
塗装の仕事は、自分がやった結果がその場に残ります。朝には色あせていた屋根や壁が、夕方には見違える。誰かに褒められなくても、本人には分かるものがあります。
「今日はきれいに決まった」「ここは前より上手くできた」
建物という大きなキャンバスに、自分の技術と経験を使って黙々と仕上げていく。その結果として建物が守られ、お客様にも喜んでもらえ、仕事として報酬も得られる。
考えてみると、なかなか面白い仕事です。

真夏の炎天下、屋根や壁に張り付くようにして塗っている職人を見れば、「うわぁ、こんな暑い日に大変だな」「自分なら絶対やりたくない」と思う人もいるでしょう。
それは別に間違っていません。実際、暑いし、きついし、危険もあります。冬になれば寒い。身体だって疲れます。
でも、そこで一つ見落としやすいことがあります。
「大変な仕事」と「つまらない仕事」は、同じではありません。
誰かに「立派ですね」と言ってもらうために屋根へ上がっているわけでも、「大変そう」と同情してもらうために仕事をしているわけでもない。
目の前にあるのは、今日の下地をどう仕上げるか。この材料をどう扱えば一番きれいに収まるか。昨日より少し上手くできるか。そんなことです。
暑いのが好きなわけではありません。寒いのが平気なわけでもありません。
それでも、塗ることそのものに面白さを見つけ、この仕事を続けている職人がいます。
仕事を終えて家に帰り、風呂に入って汗を流す。冷たいビールでも飲みながら「今日も終わったな」と一息つく。そして次の日になれば、また現場へ向かう。
「そんな大変な仕事、よくやるね」と言われても、案外本人には関係のない話なのかもしれません。
暑さや寒さやキツさとは別のところに、この仕事を続けたくなる面白さがあるのですから。
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